水上勉さんの執筆された作品を紹介しています。
私は集中治療室で不思議な夢をみた―敗戦の前年、伏見墨染町の輜重輓馬隊にいた私の持ち馬の「照銀」が、ベッドの傍にきて女ずわりをして、しきりに私に古い昔の話をする。 現実の私は醍醐のリハビリセンターに移り馬を繋いだ桜樹を捜して歩く。 表題作の『醍醐の桜』をはじめ1989年天安門事件に遭遇、急遽毅国したその日に心筋梗塞で倒れた著者の、生きて人を愛しく想う佳品7編を収録。